Blizzard

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雪。 そして雪。

待合室の中央には、年代物のストーブが音を立てていた。
ここに入ってきて、まず最初にやったことは、
髪とコートにまとわりついた雪を払い落とすこと。
足元に落ちた雪は、見るまに水たまりへと変わっていった。

午後から降り出した雪は、強い風と一緒になって、
今は横なぐりになっている。

午後3:00。1番線。
この駅始発の急行列車は、それでも定刻どおりに発車するようだ。
列車は既にホームにとまっている。

まだ改札の札は出ていない。
乗る人がそれほど多くないこの駅では、10分前に改札は始まる。
待合室にちらほら見える人は、
ゆっくりとそれを待っている乗客なんだろう。
時折私のほうを見る。
この季節に女ひとり。珍しいのかもしれない。

窓ガラスのむこう、雪は一向にやむ気配を見せない。


‥‥‥‥あの人は、
あの人は来てくれるのだろうか?
私との、遠い昔の約束を守るために。

この駅のこの始発列車に、二人で乗ることを決めたのは、
3年前のあの日だった。
どうすることも出来ない運命に流され、
そしてこのホームで約束をして、二人は別れた。

あるいは人の気持ちは、簡単に変わってしまうものかもしれない。
でも、たとえ約束が守られないことがあっても、
それを責める気はなかった。

運命?
それはもしかしたら、私の不注意がすべての始まりだったかもしれない。
でも、もういい。過去のことを悔やんでも、何もかわりはしない。
今、私に出来ることは待つこと。それだけ。


改札が始まる。

待合室に人が入ってくるたびに、恐れを抱きながら見ていた。
あの人ではないと分るたびに、心が揺れ動いて。
まだ‥‥ そう。まだ、来ない。
心の中で同じ言葉をくりかえして。

気が付けば、待合室には私だけしか居なかった。
駅員が私を見ていた。
立ち上がり、改札口に向かう。

改札口を抜けたところで振り返り、駅前の景色を見る。
歩いている人もいない。
風もやみ、雪が静かに降り積もっているだけ。

そう。そういうことだ。
あきらめるんだ。それはなかったこと。
私の恋は、3年前のあの日に終わっていた。
それを確認するために、私はここに来た。それだけのために。

列車に乗る。
5号車の2番のC。
遠いほうから乗ってしまったようだ。
この車両の先頭まで歩いていくことになる。
13番‥ 9番‥ 5番。ここだ。
崩れそうな気持ち。
私は立っているのもやっとだった。
どさっと腰をおろす。

いけない。隣に人がいた。
謝ろうと思って、そちらに向く。

「おそいんだよおまえ。すっぽかされたのかと思った」

見たかった笑顔。
聞きたかった声。

「なんだよ? 約束どおりだろ? 文句ある?」

「‥‥‥‥‥‥バカ!」

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Fin