呪テーム


注意:微エロ

帰り際に急ぎの修正が入って、家に戻ったのは夜中の一時を過ぎていた。

シャワーを浴びて、冷蔵庫から取り出した缶ビールを開けると、俺以外誰も居ない部屋にその音が響き渡る。

30歳、独身。そこそこの給料はもらっているが、使う暇がない。
いや、たとえ暇があったとしても使い道がいまひとつ思いつかない、というのが正直なところ。われながら芸のない男だ。

コンビニで買ってきたカルビ丼をチンして食べる。TVをつけようかとリモコンを探していると、カバンからはみ出ているディスクに目が行った。

これ、会社のデスクの上にあったやつ。

確か一週間ぐらい前に同僚の奴が「おもしろい動画あったからディスクに焼いて渡すわ」なんて言ってた記憶があったんで、机の上にのっかってるのを見て、多分それだろうと思って、帰り際、考えることなくカバンに押し込んだやつだ。

ちなみに中身については聞いてない。

あらためて見てみると、奴が焼いたにしては、ラベルがインクジェットプリンタで印字されてないのが不思議だ。そこらあたりやたら律儀なやつなんで、違和感がある。白地の表面には何も書かれていないけど、ケースはBD(ブルーレイディスク)のものだ。

とりあえずハードディスクレコーダに押し込んでみた。違ってたらPCであければいい。

コンビニ弁当を口に運びながら画面を見てたら、なんか、砂嵐っぽいものとノイズが……

え~っ、VTR仕様ですか? BDなのに?

と思ったら、画面が一度暗くなった。

んで、なんかこう、暗い中に動くものがあって、だんだんと明るくなって……


くっきりと浮かび上がったのは女の顔だった。白いワンピースみたいなもんを着た、高校生みたいな感じのコだった。顔立ち、結構俺の好み。

視線が合う。

その女は避けるように視線を下げた。まるで目が合ったことをはにかんだように、ちょっとぎごちない感じで。偶然なのか? そういう演出なのか? 俺は、箸を持ったまま、食い入るように画面を見つめた。

画面の中のコは小さくガッツポーズをしたかと思うと、
顔を上げ、さっきとうって変わって、なんか怖い顔でこっちをにらんでる。

なんなんだ、これ。ゲームなのか? 動画なのか?

ふっ…… 画面から彼女の右腕が飛び出した。

う~ん、3Dも最近は……

待て! オレのTVは3Dなんかじゃない!

その間に、既に彼女は肩まで飛び出していて、俺はなすすべもなく呆然としてそれを見つめていた。

かわいいワンピースを着てるのがやけに印象的だったりした。

上半身が出たところで、何か不測の事態があったようで、急速に女の頭が下がった。

これから飛び込みでもするような体勢になったあと滑り落ち、足だけが一瞬TVのフレーム(?)にひっかかる。ほんの2秒ほど。

逆立ちをするような体勢の中、彼女のワンピースのすその部分はまくれ上がり(まくれ下がり?)、下着が丸見えになる。

見たかったわけではない。見えてしまったのだ。それこそ、不可抗力ってやつだ。

しかし、すぐに足がひっかかっていたとこからはずれ、こちらへと倒れてきた。

スデーン!

前方回転しながら彼女は床に落ちた。絨毯が引いてあるので、クッションはよかったかもしれないが、それなりな衝撃はあったにちがいない。

ただ、まくれ上がったワンピースは下半身を隠す機能を失ったままであり、オレの目の前には彼女のおへそから下の全てがさらされていた。

その瞬間、時は止まった。彼女にとっても、わり箸をもったままの俺にとっても。

上半身を起こした彼女は事態のやばさに気づく。あわてて手で裾をおろしながらお尻であとずさる。背中に液晶テレビを背負うように。

いや、俺が彼女を襲ったみたいなリアクションは困るんだけど。

そんな彼女の顔は真っ赤だ。

しかし3秒後、一転して恐ろしい形相をその顔に宿した彼女は、低音でおどろおどろしい言葉を吐き出す。

いや、あくまで彼女的にはという意味で。

「み、見たぬ~~」

少しせりふを噛んだことに関して、俺はつっこむことなくさらっと流した。多分、パンツのことを言ってるんだろうが、俺も大人だ、レディに恥をかかすことはしたくない。

「いや、全然」
「うそをつくな~~!!」
「ほんとです」
「嘘をついても」

「だから、見てないって! イチゴのパンツなんか!」

あっ!

「許さん!」
その言葉とともに、オレの頭は割れるように痛くなり、心臓がきりきりと締め付けられ始めた。

マジだ。この子、そっち系だったんだ、冗談じゃなく。

でも、こう、呪いのビデオを見たために死んじまうとか、幽霊的に密かな作業中のところを見ちゃったために恨まれちゃうとか、いや、そういうのならまぁ、嫌だけど、しょうがないというか、いやしょうがなくないけど、それなりに納得できる範囲なわけだけど。

今回、この子のパンツを見たために俺は死ななきゃいけない………のか? マジで?

嫌だ、おれ、こんなの。なんかすげぇ情けないというか、
それじゃ、ここまでちゃんと育ててくれた父親と母親に申し訳ないというか。

そう思ったら、急に涙がこぼれてきた。

なにか大きなことやりたいとか、立派なことやりたいとか、
そういうのはまるで考えたことないけど、でもこれはないだろうと思う。

これで「俺の人生」っていう映画にエンドマーク出ちゃうなんて、ひどすぎるだろ?

悲しくて切なくて、もう、目の前が涙でかすんで、霊的な怨念的な彼女の姿もぼやけて……

そのとき、ふっ、と痛みが消えた。

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「一枚……二枚……三枚……………一枚足りない……」

普通なら、怪談話のクライマックスにあるせりふだが、状況は似ても似つかない状況だ。
日曜の朝10時。陽のあたる居間で、彼女が乾燥機から出してきた洗濯物をたたんでいるシーン。

数えていたのは彼女の下着だ。足りないことを気にしてるようだ。

しかし、俺にはすぐに原因がわかった。

「そりゃそうだ。ゆうべ脱いだまま、ベッドルームに放りっぱなしだと思うよ。だいたい、ゆうべ居酒屋で二人ともべろんべろんに酔ってたし、帰ってきた途端、ベッドに直行で、君は一気に服脱いで投げ散らかしてたし、んで、俺の上に乗った君は激しく腰を振って散々イキまくって、そんまま寝ちゃったしで……」

「…………」

思い出したらしい。昨夜の淫靡な時間の一部を。主演は俺と彼女。顔が真っ赤だ。

うわっ! やばっ! これは!
し、心臓が……

「や…やめろ! 恥…ずかしいからって、脊髄反射で呪いを使うのは…やめろって……」

なんとかやめさせることは出来たけど、毎日がひやひやもんだ。俺の嫁さん、この点だけ直してくれりゃ、なんの文句もないんだけどな。ほんとに。

Fin


初出:2014/05/16(金)
2ch エロパロ板 【妖怪】人間以外の女の子とのお話30【幽霊】
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