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Will you love me tomorrow? * 1 * 「あ、和枝か? 俺だ」 かたわらの携帯をとると、聞きなれた夫の声が耳元でした。 「あら、今日遅くなるの?」 「あぁ。たいして掛からないとは思うけど、先に食べといてくれ」 「ううん、待ってる。一人じゃご飯おいしくないし」 「ま、腹減ったら食っとけ」 「ありがと。我慢できなくなったらそうさせてもらう。 帰り道、気をつけてね」 「わかった。じゃ」 電話が切れる。 携帯を置いて、中断した料理を続ける。 二人で買った携帯だけど、私の着信記録はダンナの名前だけ。 ま、あっちもおんなじようなものかも。ちがったりして? 用もなく長話しすることはない。 そんな年でもない。 それにしてもなんか最近‥ 残業が多い気がする。 あと2週間で定年退職だというのに。 退職直前って、普通は業務引き継ぎだけで、 のんびりとリタイアの日を待つもんだと思ってた。 こんなご時世だから、そうはいかないのだろうか? 昔からあの人は結構マメで、 遅くなるときは必ず電話をかけて来る。 でも、一人で食べるご飯って、全然おいしくない。 子供は二人とも、とっくに結婚してこの家を出て行ってる。 普段は特にさびしい気もしないんだけど、ご飯だけは別。 一人で食べると、テーブルの上の無駄に空いた隙間で、 なんとなくわびしくなってしまう。 やっぱり待とう。 ----*-----*-----*-----*-----*-----*-----*---- 「おかえりなさ〜い」 「ただいま。あれ? まだご飯食べてないの?」 「まだ。先にお風呂にする?」 「いいのか? じゃそうする」 お風呂には一緒に入る。 別に昔からそうだったわけではない。 何年ぐらい前だったろう? たしか、子供たちがいなくなって、すこし経った頃だった。 「一緒に入ろうか?」 ってこの人が突然言い出して、私はびっくりした。 「こんなおばあちゃんと一緒に入って‥‥ 楽しいの?」 恥ずかしさを隠すために、皮肉っぽく聞いてみる。 「照れなくてもいいんじゃないか? 誰も居ないし」 読まれてた。自分の顔が赤くなるのが分る。 「ま、ガス代の節約と言うことで。 それと、ボケ防止のためにスキンシップが必要だって、 どっかで読んだ気もするし。いやか?」 「‥いいけど‥ ボケ防止って、まだ早いんじゃない?」 「冗談だよ、本気にするな」 断る理由は別に無かった。 風呂場から大きな水音が聞こえた。 急がなくちゃ。あの人、出るの早いから。 ベッドの上の背広を、ハンガーにかけ、 ウォークインクローゼットにしまおうとした。 違和感。 最初は、なにがそう感じさせるのか、わからなかった。 突然気づく。 匂い‥‥ そう、匂いだ。 ファウンデーション。それが汗と混じり合ったときの香り。 少なくとも、私の使っているものではない。 で‥? 浮気? あの人が? あわてて打ち消した。 家でも会社でも、およそそんなことに似つかわしくない人。 想像することすら出来ない。 どうせ電車でOLかなんかに付けられたんだろう。 結論を出し、お風呂に入ることにした。 この人が? やっぱりありえない話だわ。 どうかしてる、私。 「なに見てんだ?」 「え?」 「俺の顔じろじろ見て」 「別に」 「男っぷりのよさに、改めて惚れ直したか?」 「それはありえないわね」 「対象外だって言いたいのか?」 「ううん、ずっと惚れっぱなしだから」 「おっと‥ 言ってくれるな、恥ずかしげもなく」 頭を撫でられた。 この人を疑うなんて、 やっぱり私、どうかしてる。そう思った。 next |