Mission Impossible


「それにしても、どうして、こういう結論になるんだ?」
「そう。とてもいい加減な話だと思いますよね、誰でも」
「それも、これはな‥‥‥‥」
「ちょっと、って感じですね」

都心のホテル、最上階のスイート。
メインリビングはとてつもない広さ。
窓から見える景色は見たこともないほど綺麗だった。
テーブルには、花と、フルーツと、シャンパンと。
部屋は六室。

しかし今二人がいるのは、そこじゃなくて、台所みたいなところ。
景色も見えない狭い部屋。とりあえず食堂らしい。

このスイート自体、カップル用というより、
外国の要人用、とでも言ったほうがいいのかもしれない。
この部屋は、その際のガードや周囲の人間用の食堂みたいだ。

あの広いメインリビングでは、落ち着いて話も出来ない。
ここに逃げ込んで、俺たちはやっと一息ついていた。
いつもの生活空間とあまりにスペースサイズが違うのは、
結構違和感ありまくりで。

紅茶を飲む。さっきルームサービスが丁重に持ってきたやつ。
ちょっと冷えてしまったが。

「どんな話、聞いてるんですか?」
彼女が知りたがるのもよくわかる。ことがことだけに。

どうやらとてつもなく重大な問題らしい。
日本政府にとって‥‥‥‥
しかしその理由については、守秘義務とかで、詳しく話せないと。
昨日来た黒スーツの男はそう言っていた。
この件を伝えてきた奴だ。政府のコア部分の代理らしい。

理由は結局うやむやだが、答えはひとつ。
結論。
俺、山崎達雄と、彼女、石田香菜は、
一週間以内に一発やること。

俺と彼女、今日までお互いに面識ゼロ。全くの赤の他人。
で、「やれ!」と。日本政府が。言ってるわけだ。
とんでもない話だ、どう考えても。
そのために用意されたのが、この超豪華スイートルーム。


昨日、両親のいるところでこの話が伝えられ、
驚く俺と対照的に、オヤジはただうなずいていた。
様子が変なので、どうしたのか聞いたら、
事前にこの件について根回しがあったそうだ。
それも、少しだけ顔見知りの、
国会議員とか、大会社の社長とかから、じかにアクセスがあって。
既に冗談と捉えられる段階にはなかったわけだ。

理由は明かされなかったが、
ひとつだけわかったことがある。
星占いとか、神道とか、まぁ神秘ゾーンのものが、
内閣の意思決定に使われているということ。
初耳だが、予測不能の事柄について補助的に使ってるらしい。
期末試験の答えを決めるのに鉛筆を転がすよりは、
まともなのかもしれない。

しかしこの時代に、
そんなことで俺の人生決められてもな、って思った。
俺の頭の中には、トランス状態の巫女が踊ってる光景があった。
それも閣僚を前にして。

顔色に気づいたみたいで、
「コンピュータなんだよ、使ってるのは。それも2台」
と黒スーツからひとこと。

ほー。で?
「全く同じ答えがはじき出された」
クールなお答え。完全に一致したそうだ。

両親が俺を見てた。心配そうに。
しょうがない。

「わかった。わかりました。やりますよ。喜んで」

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