優 子  part.1


水沢優子。
俺にとって、彼女は単なるクラスメートでしかなかった。
1週間前までは。


ピザ屋に入って席についたところで、すぐ彼女に気づいた。
駅から環七に向かう交差点のそば、
薄いパリパリのクラストが好きで、時々一人で行く店だった。

彼女がオーダーを取りに来る。
まさかこんなとこで会うとは思っていなかった。
キャンパス以外で初めて見た彼女は、やけにかわいく見える。
「野菜たっぷりピザ」とエスプレッソ。
オーダーを告げる。必死でメモしてる。気づいてないみたい。
彼女の名前はえーっと、

思い出せない。そうだ、最初が、
「ん〜  み、水」
「あっ、お水忘れてましたね。すみません、今もって来ます」
ちがうよ、君の苗字の話を‥‥‥

水の入ったデカンタを持ってきた彼女に話し掛ける
「そうだ、水沢さんだ。ね、そうだよね?」
「はい、私、水沢ですけど‥ なんだ、市川君じゃない!」
「覚えててくれたんだ」

「ゆうこちゃ〜ん、オーダーおねが〜い」
「ハ〜イ!」
カウンターから彼女を呼ぶ声。元気のいい返事。
「残念。ゆっくりしていって下さいね」
そそくさと立ち去る彼女。

そう、水沢優子。彼女の名前。
1年生の頃は、化粧ッ気ゼロだった。ほとんどジーンズで。
まわりには、医者の娘とかお嬢様多かったし。
それほど目立つ子じゃなかった。
しかし、今日の彼女は全く印象が違う。
白いブラウスとお店の黒っぽいエプロンが、
彼女によく似合っている。シックな感じが。
別に俺は「メイドおたく」なわけじゃないが。

お店はお客さんが沢山で、
さすがに仕事の邪魔をするわけにはいかなかった。
食べて、そのまま店を出る。軽く手で挨拶しただけで。


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