Part.1 目覚め
 
 
 
そこにいたのは、当然のことながらあいつ。
片瀬 遥。
俺と同じ高校に通う高校1年生。16歳。
そして、幼馴染。
制服姿できちんと椅子に座って、こっちを見てる。
そう、こいつだ。

性別。いちおう女。
体型的には、多少、二次性徴が不足気味の感もあるが、
女であることは間違いない。

いや、人によっては、
逆にこの体型が好ましい、という意見もあるらしいが、
それは俺には全く関係のないことだ。


「おはよう‥‥」
遥は、俺が目覚めたのを見て、低い声を出した。
明るい朝の挨拶というよりも、
ルシファーが、地獄の入り口で出迎えてくれてるような、
そんな雰囲気に近い。

ちなみに、彼女が放った低い声は、
俺のベッドに到達する前に、放物曲線を描いて下降を始め、
床を突き抜け、消えていった。
おそらく立方センチあたり10tほどの重さがあるのだろう。

それでも俺は、遥の口元を見る習慣がついているので、
何を言っているかは、ほとんどわかる。
宇宙空間であってもコンタクトがとれるだろう。おそらく。

「遥、ひとつだけ頼みがある。
 ひとが気持ちよく寝ているのを、

 邪魔するな〜〜〜っ!!!!!」

「‥‥‥‥でもぅ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
 ‥‥‥‥‥‥‥‥ 遅刻しちゃうと‥‥‥
 ‥‥祐一郎さんの ‥成績が」

「待った! その長い間合い、なんとかならないのか?
 時間の無駄というか、なんというか」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥はぃ?」

「いや。もういい。今のは忘れてくれ」
「それから、俺の成績のことなんか、心配してくれなくてもいい。
 わかるか? それは俺の問題だ」
「‥でも‥」
「もう一度言うぞ。わかったか!?」
「‥‥はい」
今日は割と素直なほうか、いつもに比べりゃ。


「それより、遥。おまえ、いつからそこにいたんだ?」

「‥7時からです」
時計を見る。7時半だ。
「30分もそうしていたのか?」
うなずく。
「じっと座って?」
うなずく。
「なにもしないで?」
うなずく。
これでは、寝ていても息苦しいわけだ。わかってた事だが。

「念のために聞くけど、
 もし俺が全然起きなかったら、どうするつもりだったんだ?」
「? それは‥‥‥‥」
考えてるわけが無かった。無駄な質問だった。

「遥。先に下に行っててくれ」
「?」
「着替えるんだよ。それとも俺の裸が見たいのか?」
「あっ!」
あわてて部屋を出て行く遥。

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