食の時間を過ぎて、
ホテルのメインダイニングは落ち着いた雰囲気に包まれていた。
たまたま二人とも食事をしていないことが分かって、
ここでそろってごはんを食べることになった。

ランチをオーダーしたあと、二人はたわいもない話を始める。
男の両手はテーブルの上で組まれていた。

男は宮下と名のった。
でもそれが本名であるかどうかはたいした問題ではなかった。
出会い系のサイトで意気投合した二人が、会ってみることになって。
あるいはベッドにそのままなだれこむ可能性すら最初からあって。
二人の関係は、ただそれだけの関係にすぎないのだから。

ワインを飲みながら少し話をしてみて、
チャットでの雰囲気そのままの男だと朋美は感じた。
豊富な話題と、繊細な言葉の選択。

朋美は色々な話をしながらも、ずっとテーブルの上をちらちら見ていた。
そしていつのまにか、そこにある宮下の指から目を離すことができなくなっていた。

 

ミのない白い指がガラス細工のようにまっすぐ伸び、組み合わさっている。
朋美は、その指をここで口にくわえたい、という強い衝動に襲われていた。
初対面の男に対して、それもこんな場所で、女がさりげなくするようなことではない。
そうわかっていても、沸き起こる衝動はとどまることを知らず嵐のように襲い掛かる。

朋美はそれをなんとかこらえていた。

「どうかしましたか?」
その言葉にハッと我に返る。
不思議そうな顔をして男は朋美を見つめていた。
朋美は自分のはしたない葛藤を悟られたのかと思い赤面する。

「あ、いえ、別に、なんにも」

パスタがメインの簡単なランチを食べる。
その間も、なるべく手のほうを見ないようにしていたのに、
朋美の目はどうしても男の指先へと吸いつけられてしまう。
そしてあわてて視線をそらす。
幾度となくそれが繰り返された。

今も、宮下は左手でパンをつまみあげている。
もう片方の手でそれをゆっくりとちぎった。
オリーブオイルを少しつけ、それを口へと運ぶ。
朋美はうっとりとしてそれを見つめる。

美しすぎる‥‥

そんな感慨と同時に、ベッドの上でその指に弄ばれる自分の姿が頭をかすめる。
そのとたん下着の奥でなにかがあふれた。クロッチ部分が一瞬にして濡れて、
生地が肌に張り付いてしまい、座っていても少し気持ち悪い。
こんなふうに突然に起きたあまりな事態に、朋美は困惑を覚えていた。

なんとか食事を終え店を出たところで、宮下が朋美に聞いてきた。
「時間、まだ、ありますか?」

こんな形のデートは初めてとはいえ、朋美にもその言葉の意味はわかった。
そしてそれは朋美の今の切なる希望でもあった。
朋美はそのとき猛烈に「したく」なっていたのだった。

すぐに宮下の腕につかまり、
「どこにでも」と言って微笑んでみせる。安堵の思いもあって自然に出た笑顔だった。

「それは光栄ですね。では、行く先は私にお任せを」
180cm以上ありそうなその身長と言い回しがあいまって、
まるで中世のナイトがすぐ横に立っているような錯覚に、
朋美は捉えられていた。

 

かにナイトは今、その雰囲気にふさわしく朋美の前にひざまずいている。
少しイメージが違うのは、横たわる朋美の両足が大きく広げられていて、
その中心に彼の顔があることだった。

始まりはシャワールーム。
汗を流してから始めたいと思っていた朋美は、
先にシャワーを浴びるように言われ、迷うことなくそのとおりにした。

軽く全身をボディソープで洗い、泡を流しているところに、
音も立てず宮下が入ってきた。そのこと自体を朋美は拒否する気はなかった。
無言の容認と理解した宮下に後ろから抱きしめられ、
朋美の胸の上には宮下の両手がそっと載せられた。
首筋には唇が柔らかく押し当てられている。

片手の手がそこから離れ、
ゆっくりと上に向かい、朋美の目の前で停止した。
口元の3cm手前に指がある。

その行動の意味するものがわからず朋美はとまどう。
しかし宮下は微笑みながらこう言った。

「どうしたの? 我慢しなくてもいいんだよ?
 朋美ちゃんはこれが欲しかったんだろ?」

 

ャワールームでの戯れの後、二人はベッドの上でからみあっていた。
朋美は伸ばされた宮下の指を口でしゃぶりながら、
下半身では唇による愛撫をうけていた。
決して力をこめることなく、いとおしむように繰り返される愛撫と、
朋美の口の中で舌と絡み合いながら生き物のように動く二本の指と。
朋美は2箇所の粘膜を同時に男に犯されているような感覚に陥っていた。

押し寄せる快感の強さを伝えるかのように、朋美の中心はゆっくりとひだをうねらせている。
少しずつ押し出すように内部から液体があふれ、
宮下が舌を動かすたびに卑猥な音を立てるようになる。
あるいは宮下が意図的に音がするようにかき回しているのかもしれない。
唇をふさぐ指の隙間から、朋美の喘ぎ声が漏れ始める。

クリトリスの周囲を宮下の舌が軽やかに動き回り、
あたりをはばかることのない声が朋美の口からはあがる。
朋美が唇で指を吸う音と、宮下が朋美の下半身で立てている音が淫靡にまざりあい、
部屋の中を隙間なく埋め尽くす。

朋美が耐え切れず左右に首を振るたびに、
開いた口から唾液が指を伝いシーツにこぼれる。
しかし、朋美はそのことに気付いていない。
痴態をさらす自らの姿を知ることはなかった。
それを見ているのは宮下だけだった。

宮下の目の前では、
朋美の中からあふれ出した液体がそのままベッドへと滴っていた。
時が来たのだと、どんな男にも分かるようなサインを出していた。

ぬめるはざまをゆっくり舐め上げた舌は、しばらく思わせぶりにとどまった後、
狙い済ましたように朋美の敏感な場所を跳ね上げた。
その一撃に、朋美は大きな叫び声をあげ絶頂を迎える。
幾度か痙攣した後、ぐったりとして動かなくなった。

 

ての力が抜け、目を閉じ横たわる朋美の両足を、宮下はそっとかかえた。
そして、自らの硬くなったものを中心に押し当てる。
その瞬間、朋美の体がビクンと跳ね上がる。

かすかに力がこめられ、入り口を閉ざしている肉をかすかに押し開く。
「あっ!」
朋美が強烈な感覚をうけ、声を出す。
痛みというほどではないにしても、しばらく押し広げられてなかった場所は、
侵入者に対して形ばかりの抵抗を見せた。

しかし、宮下は決してあせる様子を見せない。
無意識で起きる朋美の抵抗に対し、
「怖くないんだよ」と諭すように、ゆるやかな動きで話し掛ける。

だから、入り込んでくるものを朋美は余裕をもって感じることができた。
1ミリずつ押し込まれるものに、朋美のすべての感覚が集中する。
宮下の背中に手を回し、力の限り抱きしめる。

唇が触れ合う。舌が唇の境界線を越え、からみあう。
朋美のあえぎ声が出口を失い、喉もとでくぐもるように響く。
宮下の指は、今は朋美の髪をなでている。
背中に回した手で、朋美は宮下の尻をつかみ引き寄せようとする。
拒絶することもなく、しかしゆっくりと、宮下は朋美の中に自らを埋めつづける。

全てが朋美の中に収まったとき、安堵のため息が二人の口から同時に漏れる。
もたらされた快感がある程度おさまったところで、
朋美は無意識に固く閉じていた目を開けた。
宮下が自分を見つめていた。

朋美がそれに対して微笑もうとしたとき、宮下の腰が一度ひかれる。
思わず引き止めるような動作を朋美がした瞬間、
それを無視して宮下の腰はゆっくりとうねり始めた。

入り口の部分と、中の浅い部分と。それもあちらこちらに対して。
宮下の硬くなったものの先端が、朋美の中の様々な部分をかき回している。
幾度となく繰り返されるうちに、
特定の場所にそれがあたったとき、朋美の声が跳ね上がるのに宮下は気付く。
まんべんなく刺激を与えていた動きが止まり、少し直線的な動きへと変わる。
しかし決して大きく動くことはなく、
一箇所を狙うように角度を維持しながら、かすかな動きを繰り返す。

 

美の好きな部位を宮下が瞬時で探り当てたことに、
朋美は驚かざるを得なかった。
しかし、朋美が冷静でいられたのもそこまでだった。

さっきより、更に強く宮下のものを意識してしまう。
中が熱く充血して、硬くなったものを強くつかもうとする。
ヒクヒクと動いている場所は、既に朋美のコントロール下にはない。
そうやってつかまえるように締め付けるたびに、
朋美自身も強烈な快感を覚え、より一層のめりこんでいく。

とどまることを知らぬ追求の果て、
朋美は大きな叫びをあげ、からみつかせていた両手両足を投げ出す。

宮下はそっと朋美から離れようとした。
朋美は荒い息遣いで胸を上下させながらもそうさせまいとしがみつく。
乳首を固く尖らせたまま、宮下の胸に押し当てる。

半開きの朋美の唇に男の唇が重なる。
求めていたものを得て、朋美は激しく吸い返す。
いつまでもそのまま時が過ぎていく‥‥‥

それからも、毎週のように二人は会い、ベッドで時間を共有した。
単に互いの快楽のためだけに存在するパートナーであるとはいえ、
いそいそとベッドに入り込む時の二人は、とても楽しそうだった。

幾度もの絶頂を迎えて、朋美がへとへとになってしまうことも多かった。
時として、二人で泊ってしまったこともあった。

宮下に会って以来、
朋美は、「たまってる」と感じることなど全く無くなっていた。
すくなくとも「体の隙間」は、もうどこにもない。

ギブアンドテイクの関係ではあっても、ベッドの上では恋人同志のようだった。
朋美は宮下に対し感謝の気持ちすら抱いていた。
そしてこの状態がなるべく長く続くことを心から望んでいた。

 


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