デジャブ

ゆったりとした目覚めの中に、微妙な違和感が存在していた。
その原因を突き止めようと思った瞬間、
出会った事の無い強烈な快感がオレを襲った。

グハッ! めちゃくちゃ気持ちイィ!

なんだこれは!
だいたいどこから来てるんだ?
ん? こいつは… どうやら下半身からのようだ…

オレはあっというまにその刺激に意識を奪われる。

とても柔らかい何かがスッポリとオレのモノを包んでいて、
適度な圧迫とあたたかさを途切れなく供給していて、
でもそれだけじゃなく、なんか微妙に動いていて、

先端に向かいゆっくりと動いたそれは、少し立ち止まった後、
再び根元の方まで降りてくる。
その動きがもたらすここちよい感覚に、オレは我を忘れそうになる。

しかし、事の真相を知りたいと言う欲求が、
つかのま、その快感を意識の中心から退ける。
オレはわずかに首を持ち上げて、視線を天井から足元へと滑らせた。

そこにあったのは想像を遥かに越えた光景だった。


オレのパジャマのズボンは膝までずり下ろされていて、
きゃしゃな体つきのコが、オレの両足をまたいでこちら向きに座っていた。
顔を下げているので、その表情を見ることはできない。

長い髪がオレの腰あたりにかかっている。
茶色の制服。スカートはタータンチェック。
どこの高校のだったのか、思い出せない。

オレがそんなふうに見てる間も彼女は髪を揺らし、「その」作業を続けていた。

白くて細い手をベッドに突いて体を支え、
そしてその顔はここからは見えないけど、
間違いなく彼女の口は… その口はオレのをしゃぶって…

くっ! だめだ! 気持ちよすぎる!

そのときだった。

オレの気配に気づいたに違いない。
ふっ、と彼女の動きが止まり、顔をあげる。

オレのを… くわえた… ままで…
しっかり唇にはさんでて… そんな… とんでもない状態で…

彼女はニコッとオレに向かって微笑んだ。

なんのかげりもないその笑顔の主は、

なんと、 結衣 だった。

「おはふょう」

普通に朝の駅で偶然出会った知り合い同士のように、結衣はそう挨拶した。
口に余計なものが入ってるせいで、いくぶん不明瞭な発音だったけど。

結果としてそれが「とどめ」となった。

すでに興奮の極地にあったオレは、
目の前の想像を絶するシーンと、もたらされた新たな刺激、
そして予想もしなかったオンナノコの出現と、
その天使のような微笑みの前に、なすすべもなく一気に頂点へと導かれた。

まずい! 出ちまう!
しかしそいつを意識的に止めるなんて器用なマネは、出来るわけがない。

強烈な快感とともに、痛いぐらいにカチカチになったそれが、
結衣の口の中でビクンと跳ね上がり、すごい勢いで射精を始めた。

最初の噴出の勢いがあまりに強かったせいだろう、
のどに詰まらせて結衣は少しせきこんだ。

あわてて結衣の顔を引き離そうとして、オレは彼女の頭に手をやった。
でも、彼女はその手をやんわりふりほどき、
口を離そうとせず、逆により一層深くオレのものをくわえこんだ。

そしてそのあとのオレの脈動を、結衣はその口で受け止めた。


射精後の余韻で頭がボーっとなってて、
とんでもない事態の中、オレの頭は完全にウニと化していた。
一方の彼女もまた、口の中にオレのを収めたままで身動きをしない。

朝7:30、普段なら眠気に支配されたまま、
ノロノロと制服に着替えてる時間のはずだった。そのはずだった。

さきほどまでの荒々しい時間が嘘のように部屋は静まり返り、
目覚まし時計の秒針が生み出す音が、その中をゆっくりと流れていた。


彼女がゆっくりと顔を起こす。ポロンと口からアレがはずれる。
唇の端から、少し白いものがこぼれていた。

ゴクッ!
部屋の中に音が響いた。同時にカノジョの喉が動く。
そう、それは彼女が口の中のものを飲み込んだ音。
オレは虚を突かれて、言葉を失った。
唇の周りを舌でぺロっとなめると、オレに向かって微笑んだ。

「どう… だった?
 えっと、あんまりうまくなかった… と、思うけど、
 でも、わたし こ〜ゆ〜の… やったこと… ゼンゼンないから」

なんか消え入りそうにオレの目を見つめてる。
そんなことはない! って言おうとしたときだった。

「あっ! きれいにしてあげる!」
照れ隠しだったのか、
そう言うが早いか、結衣は再びオレのモノをくわえて、
舌と唇を使ってなめまわし始めた。丁寧に。くびれのとこまで。

最後の仕上げはティッシュでしてくれた。正直ちょっと痛かったけど。
ほとんど正気に戻っていたオレはそそくさとズボンを引き上げた。
そして、今ここで目の前の大きな疑問を解消するべきだと思った。

「あの、あのさ、ユイ? ど、どうして」

オレの言葉が終わらないうちに、目覚し時計が急に鳴り始めた。
手を伸ばしパチッと止める。カラダが無意識的に勝手に反応していた。
改めて結衣のほうに向き直る。
見れば、結衣は既に立ち上がり、カバンを持っていた。

「あ〜っ! いけな〜い こんな時間だ! 遅刻しちゃうよ〜
 あたし、もう行くね? じゃね」

オレの問いかけに答えることなく、
心なしか赤い顔をした結衣は、バタバタと部屋を出て行った。
ドアがしまる。

遠くで声が聞こえた。
「おばさん、お邪魔しました。
 私遅刻しそうなんで先に行きます。また来ますね。
 大丈夫、翔ちゃんはしっかり起きてますから。
 じゃ、行ってきます」



「おい! 翔太〜! 起きてるか〜?!」

気付けば目の前に陸の野郎のツラがあった。
ここはオレの「まなびや」、そう、ガッコなわけで。

「あんだよ! ビックリするだろうが、
 んなきたねぇてめぇのツラ急に出されたら誰だって」

「ばっかやろう、何度呼んでも全然返事しねぇし、
 おかしいのはお前のほうだろうが?!」

「え? あ、 そう… だったか?」

「あぁ。 私の心は今、ネバーランドに行っちゃってます〜 みたいな?
 なんかうっすら微笑み浮かんでて、思いっきし気持ち悪いし。
 なぁ、翔太、んとに大丈夫か?」

陸が声を落とし耳元でささやく。
「おクスリでもやってるのか? 朝から?
 やめとけよ、ああいうのは。悪いこと言わないから」

「え? いや、そんなんじゃないんだ」
「ほんとに?」
「あぁ」
「…そっか、それならいいんだけどな」

「あのさぁ、 …ちょっと悩み事があるにはあるんだけどさ。
 ひとには言えないってレベルのが、だから… わりぃ」

オレの言葉に陸はちょっと驚いたポーズをした。

「へぇ〜 悩みね〜 なんか翔太らしくないけどな。
 まぁたまにはとことん悩め、青少年。だいたいおまえいつもノー天気に暮らしてんだから。
 思うに、その苦悩は帝国の騎士になった暁にはきっと役立つだろうな、うん」

そんなに深刻な問題じゃ無さそうだと判断したんだろ、
陸は一気にオチの舞台設定を中世に落としてきやがった。

「心配して頂いて、ありがたく思います陸様」
「いやいや。それではまた会おうぞ」
偉そうに言い放って、奴は別の友達と話し始めた。

けっこういい奴だ、陸は。
しかし、奴にだってオレの今の悩みを相談するわけにはいかない。
ふつ〜に。どう考えても。

確かに、奴に気付かれたように、
家を出てからこっち、オレの頭の中は、
ずーっと今朝のことでいっぱいのままだった。
どこからどこまでもつじつまの合わない話。

如月結衣。

ガキの頃から近くに住んでる、言ってみりゃ幼馴染。
小学生っくらいの時は一緒に学校に行ってたけど、
中学卒業して、オレが公立高校、彼女が私立の女子高ってことで、
通学時間帯が違ってるせいもあって、駅で会うことがほとんど無くて。

だから、オレと結衣の昨日までの関係っていったら、
正直、恋人どころか友人ですらなくて、ほとんど赤の他人状態。

……でも、それは他人から見た場合の二人の関係。
俺自身は、結衣のことを忘れちゃいなかった。
ずっと、中学生の頃から、変わることなく。

ぶっちゃけ彼女のことが好きだった。
家柄よくて品行方正でお嬢様街道驀進中の結衣が、
とてもじゃないけど俺の手の届かない、高嶺の花となっちまった今でも。

必殺チキン野郎で、その上限りなくヒッキー予備軍であるオレは、
結衣にその気持ちを伝えたことがない。
だから結衣はそんなオレの気持ちを全く知るはずがない。
だいたい2D系オタの幼馴染なんていらないだろ、ほとんど。

でも… なら… 何なんだ? けさのあれは?

だいたい、つきあってもいない野郎の家に前触れもなく朝やってきて、
女子高生が一気にフェラチオなんてするか? で、ゴックンまで?
嘘だろ? なんか間違いがある、この展開、絶対に。

どうどう巡りをくりかえしながら、珍しくどこにも寄る事も無くまっすぐ家に帰る。

部屋に入って、きのうから今日にかけて、何があったか順番に思い出す。
新しいデバイスを追加してからPCが不機嫌になるように、
昨日起きた特定のなにかに、このとてつもないエラーの原因が隠れてる、
そう思ったから。

しばらく考えていて、机の上の石に気付く。
そうあれは昨日届いた『ミステリアスルビー』。通販で買った「神通力」抜群のアイテムだ。
ホントは水晶の球がインテリアとして欲しかったんだけど、見たらめちゃ高くて。
ま、雰囲気的に近い感じだったからとりあえず買ったモノだ。

とはいえ、届いた箱を開き、取説の「神通力」に関する大げさな記述を見て、
ちょっとばっかり心が動いたのも事実。
そして、軽い気持ちでオレが願ったのは、『結衣とのエッチ』 だったわけだけど…

え〜っ! それか〜!? うそだろ〜!?

「トントン」 ノックの音がした。
いったい誰が、この家でノックなんてしゃれたもんを…
「カチャッ」
音を立ててドアが開き、隙間から結衣が顔を覗かせた。
「入って… いい?」

「あぁ」
驚きはしたが、断る理由などオレにはなかった。
結衣は制服じゃなく、ジーンズとタンクトップだった。



「そこの椅子にでも座って」
そんなオレの言葉を完璧に無視して、結衣はまっすぐこっちに向かい、
ベッドの上、オレの隣に腰を降ろした。
すぐに結衣の手がオレの腰に回され、胸に顔を伏せてくる。
そして小さく呟いた。「会いたかった…」

やばい。やばすぎるって。
オレ、心臓がバクバクして、のどから飛び出しそうだった。

ん? 彼女の両肩が小刻みに震えてるみたいな、そんな気が、した。
腕をつかんで起こしてみたら両頬に涙が流れてて、
結衣の見せる切なそうな表情に、オレはたまらなくなってキスをした。

唇を離し、こんどは左手で体を抱く。結衣はオレに寄りかかってくる。
オレの肩に彼女の髪がかかる。結衣の匂いがした。いい香りだった。

ふと気付くと、俺の股間が強烈な主張を始めている。痛いぐらいに。
なんか、おだやかな今の状況とは微妙にそぐわないけど… こうなったら勢いだ!
そう思ったオレは結衣の体をベッドにそっと横たえた。
いくっきゃない!

今、夕方5時。お袋がメシ作って呼びに来るのはだいたい7時。時間は十分にある。
おかしいぐらい冷静に計算をしてる自分がいた。

キスしながら右手を彼女の胸に当てると、ビクッって彼女の体が震えた。
少し力を加えると柔らかく手のひらが押し返されて、すげぇ気持ちいい。ポヨンって。

体を離し、両手で正面から両方の胸をつかむ。
結衣の両手がそっとオレの手を包む。でもそれは拒否っていう感じじゃなかった。
自信を持ったオレはタンクトップを捲り上げて、
あらわになった薄いピンク色のブラも一気に押し上げた。

そんな大きくはないけど、可愛くプクンとふくらんだ胸がオレの目に映った。
小さなふたつの乳首が見せる景色にオレは感動した。
かわいくて… エロくて… 綺麗で… もうたまんない!

吸い寄せられるようにオレはそれを口に含んだ。
「ふっ」
音にならないため息のようなものが彼女の唇から吐き出される。
小さくてころころとしたものを口に含んだまま見上げると、
結衣は目を閉じ、口を半ば開いたまま息を止めている。

舌で乳首をスッと舐めあげてみた。
結衣の体全体がビクッっと動く。
反対側の乳房を手でもむと、結衣の手がオレの髪をつかみ、
かきまわすようにし始めた。
舐めあげるたびにその手にぐっと力が入る。

唇と手を離した。
もしかして急にこんなことをして、怒ってるかもしれないって、
そう思って。

結衣は一度大きく深呼吸をした。そしてオレのほうを見た。
その表情には微笑が浮かんでた。
全然怒ってなんかいない。オレはそのときに、全てのためらいを捨てた。

結衣の腰のあたりに座りなおして、
えらくスリムなジーンズのウェストのボタンに手をかけた。
スムーズにボタンははずれた。ファスナーを下まで降ろす。
ブラとおそろいのパンツが見えた。おへその近くに小さなリボンがついてて。
でも肝心な部分はタイトなジーンズが邪魔しててよく見えない。

ジーンズの両側を持って、オレがおろそうとした時、
オレの動きにあわせて結衣が腰を持ち上げてくれた。
腰を超えたあたりで手を離し、今度は裾から引っ張って全部脱がせた。

今、胸が両方とも見えていて……
目の前の結衣の下半身にあるのはちっぽけなパンツだけ……
無茶苦茶刺激的なその眺めに、オレはアホみたいに見とれていた。

「いや! 見ないで!」
その視線に気付いた結衣は、両手でオレの肩を掴んで引き寄せる。
逆らうことはしなかった。
キスをしながら、右手でふとももに手をのばす。
すべすべでとっても気持ちが良かった。
しばらくその感触をあじわってから、思い切って手を内側に動かす。

最初は固く閉じていた両足が徐々に開いて、
ようやく手のひらが結衣のその場所に到達した。
なんか頼りないぐらいの柔らかさが布越しに感じられる。
ふわふわしていて、そして、すごく熱い。
結衣はぎっちりオレにしがみつく。

こんどは指先でパンツ越しにそこを撫でてみた。
形がなんとなくわかる。うねうねした感じがしてて、
まんなかですこし盛り上がってて、多分それが……

ん? なんか…… なんとなく湿り気が指先に……
触れ続けているうちに、それは確信へとかわった。
パンツの奥のあそこが濡れてるんだ、きっと。

確かめたくて横の隙間から指を侵入させる。
かすかに毛の感触が指先に感じられた後、とてつもなく柔らかいものに触れた。
これが、結衣の、おま……

突然オレのしたことで、結衣が反射的に身をよじった。
その拍子にスッと入り口をくぐりぬけて一瞬指先が奥へと……
着地した場所はヌルヌルとしていて… していて…
ええぃ! もう我慢できない。 限界だ!

上半身に引っかかってるタンクトップとブラを脱がせ、
足元にまわって、形ばかり下半身を隠してる結衣のパンツを迷わずひきおろした。
真っ白なふとももの中心に、陰毛が影を作っていて…

あせりまくりでころびそうになりながら服を脱いだオレは、
ベッドの上の結衣におおいかぶさろうとした。

でもその瞬間、オレはベッドの横に立ったまま固まっていた。
一糸まとわぬ裸で結衣が目の間に横たわってて、こっちも素っ裸、
そんな瀬戸際の状態で。

これは何かが違う、そう感じて。
少なくとも今の状態は本当にオレが望んだカタチではなくて。
わけのわかんないルビーもどきの「神通力」で、
それでこんなふうに結衣がオレのものになったって、全然うれしくない自分がいて。

オレは机の前の椅子にドスンと座った。
つくづく思った。結局オレってバカだ。しょーもないくらい。
つまんないとこで律儀に義理立てなんかして、ほんとに困ったもんだ。

ここで義理を立てれば、もう一方の既に立ったヤツの行く先がなくなる、
という、とても切実な問題だってあるのに。

……まぁいいさ。これはこれ。
バカはバカなりに生きていく! もうやぶれかぶれだ〜!

椅子から立ち上がり、さっき脱がせた結衣の服をまとめて彼女の体の上にかける。
手早く自分の服を着て、こんどは結衣に背中を向けて椅子に座る。

「服、着てくれ」
背後でごそごそと起き上がる音がした。
同時に、「え?」といぶかる結衣の声がした。

「いいからそいつを着てくれ、すぐに」
「でも、私は… あの… 翔太となら…」
「いいから!! その話は今はやめとこ。ともかく服を」
「………わかった」

衣擦れの音がして、彼女が服を着ているのが背中越しでもわかる。
必死にその景色を想像しようとする自分がいた。

「服、着た」
オレは振り返った。この部屋に来たときのままの結衣がそこにいた。
「家まで送ってくよ」
「でも」
抵抗を示す結衣をむりやり外に連れ出した。

結衣の家に着くまでオレたちは無言だった。
彼女は何か言いたそうにしたけど、ついに口を開くことはなかった。
「じゃ」
玄関先。それが自分が口にしたのだと思えないぐらい抑揚の無いお別れの言葉。
でもそのとき、オレの胸はえぐられるような痛みを感じていた。

「待って! 待ってってば! 翔太? どうして?」
「いいんだよ。これで」
「だからそれじゃ全然説明になってな…」
かまわずオレは結衣を玄関の門の向こうへと押しやる。
「いいんだこれで。勝手な言い方かもしれないけど、
 今日のことは忘れてくれ、全部、頼む」

立ち去るオレの背中に、結衣のすすり泣く声が聞こえた。

家に戻ったオレは、『ミステリアスルビー』を手に持った。
たぶんこいつが今日起きたことすべての原因だ。

オレは工具箱からかなづちを取り出し、迷うことなくベランダでそれを粉々にした。
カケラも残さずほうきで集めてビニール袋に入れ、
そのままゴミの集積所に持っていって放り投げた。
なにもかも、そう、なにもかもがこれで終りだ。

オレが結衣に対して持っていた想い。
彼女の微笑み。姿、そしてあの甘い香り。それらのなにもかもが。

今頃、彼女はあの石のコントロールから解き放たれて、
オレとのエッチな時間のことを思い出して、つらい思いをしてるに違いない。
同時に彼女の意思を奪ってしまったオレのことを、激しく憎んでいることだろう。

オレに悪意があったかどうかなんて、彼女にとってはたいして意味を持たないことだ。
…おそらく彼女と言葉を交わす事など、このさきずっと、永遠に、なくて。

オレは珍しくその晩眠ることが出来なかった。
胸がチクチク痛んだまま、夜が明けるまで天井を見つめていた。
しかし朝の新聞配達が音を立て始める頃、少しウトウトして……

夢の中では結衣がコワい顔をしてオレを睨んでた。
そしてクルリと背中を向け、足早に立ち去っていった。振り返ることもなく。
オレはその場で、ただ呆然となすすべもなくうずくまってる。



ゆったりとした目覚めの中に、微妙な違和感が存在していた。
その原因を突き止めようと思った瞬間、
いや待て、と記憶をよぎるなにかが……
これって、デジャブってやつか?
既視感というのは景色に対してのはずだけど、感覚でも同じようなことが?

いや。これは昨日の朝に実際にあったことだ。まぎれもなくそう。
そしてオレが性懲りもなく未練たらしく、それを今、夢に見てるだけ……
…そう、これは夢であって…

ん?! やっぱりなんか違うような、
っていうか… えらく… リアルに気持ちがいい…

目をあけて体を半分起き上がらせると…
やっぱりオレのを唇でくわえた結衣がそこにいて、ニコって微笑んでいた。

あわててもう一度横になり、目をつぶる。
目覚めろバカなオレ! いい加減あきらめるんだ!
ったく惨めだろ? ここまでイジイジと夢に見たりして、いくらなんでも、

そのときだった。下半身の一部を包んでいた圧迫が無くなった。
そう、それでいいんだ。もう一度眠って起きれば… そうすれば……

「おはよう!」
異様にすぐ近くで声がした。まぎれもなく結衣の声だ。
目を開けると、まんまえに視野全部をふさぐ彼女の笑顔があった。
「結衣… おまえ… 夢じゃ…」
「夢じゃないよ、ほんものだよ?」
そう言うが早いか彼女の唇がオレの唇に重なった。
確かに… こんなに気持ちいい夢なんて… あるわけ…

彼女は起き上がる。つられてオレも起き上がった。

「だって… だっておまえ」
「な〜に?」
「きのうオレが帰った後すぐ、なんか、その、感じたろ?」
「うん」
あまりにさりげないその答え方にオレは面食らう。いや、きっとわかってないんだ。

「だから…」
オレは、あの「神通力」を秘めた石のこと、
そしてそれが結衣の意思をコントロールしていたに違いないこと。
もひとつ、オレがふとしたはずみであの石に願ってしまった内容と。
全てのことを正直に順序だてて話した。

「だからゆうべ、あの石をオレが叩き割ったとき、結衣の方でも」
「うん、それはわかった。あ、私コントロールされてたんだって、すぐに」
そうか…

「ごめん!!」
オレは頭を下げた。でも顔をあげると彼女はキョトンとしていた。

「?? なんで? なんで翔太が謝るの?」
「当然だろ。あの石とオレの願い事のせいで、
 おまえは好きでもない男の家に来て、無理にあんなことやこんなことを」
「ストップ!」
「?」
「それ違う。全然違う!」
「…どこが?」
「その… あの… 好きでもない、ってとこが」
「?」

何の前触れもなく、結衣はオレのものを口でカプッってくわえた。
そのままオレを見て微笑む。
「そ、それは…  たぶん、まだ体の中に昨日の効果が残っててそれで」
唇に挟んだまま結衣は首を横に振る。
ちょ、ちょっと、それはあまりに微妙な刺激が。

結衣は口を離した。とりあえずその場はほっとしたオレ。
彼女は窓の外の景色を見ながら、ひとりごとのように呟く。
「ずっとね。ずっと前からね。私、翔太のこと、好きだったんだよ?
 翔太そんなこと知らないよね? 言ってないもん、あたりまえか」

「だから、きのう急にエッチなこと始めちゃったのはその石のせいなんだけど、
 私の気持ちはずっと前から今この瞬間まで全然かわってないの、うん、全然」

やっとのことで、すべての事柄がオレの頭の中でひとつにまとまった。
迷いのすべてが消えうせ、オレは結衣を力いっぱい抱きしめた。

腕の中でいごこちよさそうにしていた彼女がつぶやく。

「だけどね、ひとつだけ困ってることがあって。
 石の効果が消えた今でもね、私すご〜く… エッチなままで。
 もしかしたら自分でも気付かなかったとこが、
 こんどのことで、表面に出てきたのかもしれないのかな、って。
 ある意味一番ショックなのはビミョ〜にこのことだったり」

結衣はそう言いながらオレの手を彼女のスカートの奥へと導いた。
指が彼女のパンツに触れた。
その場所はぐっしょりとなっていて、はっきりと濡れていた。

「ね? すごいでしょ? もう自分でも驚いちゃうぐらい。
 …あのさぁ、聞きたいんだけど?
 翔太もしかして、こんなエッチなオンナって…… いや?」
「ぜんぜん!」オレは即答した。

「よかった…」

うれしそうにそう言ったあと、結衣はモジモジし始めた。

前の日からの修羅場を無事にくぐりぬけて、なぜか余裕の出来ていたオレは、
そのときの彼女の気持ちが手にとるようにわかっていた。
でもそれは、なんか、結衣の可愛い口から言葉にして欲しくて、
あえて黙っていたりした。ちょっとだけ意地悪な気分で。

しばらくして、結衣が意を決したようにお願いを口にした。

「あの… これで… シテ… ほしいんだけど…」
オレの硬くなってるヤツをすっと触りながら、顔を真っ赤にして…
めちゃくちゃ可愛い結衣の「おねだり」にオレは激萌えした。

あとはまぁ、なんというか、ふたりしてケダモノになったというか、
ともかくすごいことになって。

でも夢中になりすぎて、ふと気付いたら昼近くで、
ガッコに行ってから、まわりの人間に対してつじつまあわせるの大変だった。

こうして、オレと結衣はその日からめでたく恋人同士になったわけだけど、
数ヶ月が経ち、
結衣は隠し持っていたエッチの素質を存分に開花させ、
その清楚なたたずまいからは想像もつかないほどの淫乱女子高生に変身していた。

今もちょうど、結衣はオレの上に乗って腰を激しくくねらせている。
口から喘ぎ声がもれないように、自分の手で口を押さえながら……
こう、見てるだけでもエロいっちゅうか… 半開きの目がいっちゃってて…
接触部分の快感とアダルトビデオと見間違うばかりの結衣の痴態に、
オレはなすすべもなく激しく射精してしまう。

ところでさぁ 結衣?
きょう、これで何回目になるんだ、いったい?

The End