Yawara!
[1] Kojiro à Paris
[2] 秘技 白鳥の湖
[3] 通りすがりの柔道家と富士子
[4] 『ばかやろー』 vs 『イチ・ニ・サン』

Kojiro à Paris   パリの虎滋郎

chapitre 1

馴染みのビストロで、虎滋郎はポリポリと音を立てて柿ピーを食べていた。
フランス代表チームの練習を終え、この場所で食べるこの辛味こそが、
彼に真実のやすらぎをもたらす至福のアイテムだった。

贔屓にされてる店のほうも心得たもので、
彼が席に着くと、なんのためらいもなくこれが出てくる。
また、日によっては、虎滋郎のデザートだけがクレープ、などということもあった。

フランス柔道を支える敏腕コーチとして礼遇されているのもあるが、
いかにもおいしそうにスイーツを食べる虎滋郎の姿に、
シェフが連日張り切りっているせいだという事実も見逃せない。

それにしてもいちご大福が山のように出てきたときには、流石の虎滋郎も驚いた。
彼の父親と同じように、あっという間に全て平らげたのは言うまでもないことだったが。

虎滋郎お気に入りの穀物系パンが出てくる頃になって、
テーブルの向かい側にギャルソンが立ち、空席だった椅子を優雅に後ろに引いた。
ギャルソンの隣にいた小さな人影が、そっとそこに腰掛ける。

顔をあげたその女性は虎滋郎に向かって微笑む。

「お久しぶりです。ここ、いいですよね?」
それは彼の妻、玉緒だった。言い方すら、あくまで遠慮深い。

「うむ、もちろんだ」
虎滋郎の短い言葉に、緊張の色が濃く含まれているのが見て取れる。

「いつこっちに?」
「ついさっき空港について、そのままここに」
「そうか」

スープとサラダが出てきた。

食事が進むうちにこのテーブルに存在した言いようのない固さもほぐれ、
学校から帰って来た子どもが母親にするように、
玉緒はいつになく饒舌に、猪熊家の出来事のあれこれを夫に話し始めていた。

「でね、あなた。お義父さんたら柔に、
 『松田、松田って、わしはそんなチャラチャラした娘に、
  おまえを育てたつもりはない!! だいたいあんな三流スポーツ新聞の記者なんぞ』
 なんて言うものだから、柔が怒って三日も口をきかなくなって、
 お義父さん、『玉緒さん、なんとかしてくれ』って頭をさげて頼んでくるし、
 それはもう大変だったの」

「そうか」
「あのコ、誰に似たんだか頑固で困っちゃいます」
「うむ」

chapitre 2

玉緒の発言に虎滋郎が短く言葉を返すだけの、
かろうじて双方向と言える空間がそこにあった。

とはいえ、それは、二人にとってごく普通の姿でもあった。
柔が生まれる前からずっと同じ、変わらない夫婦のスタイル。

こんな二人が遥か昔、どうやって結婚にまでこぎつけたのか?
そして虎滋郎はプロポーズという儀式をちゃんとこなせたのか?

この二人を見ていて当然沸き起こるこれらの疑問については、
改めて触れることにして、今はビストロの二人に視点を戻す。

「ここ、美味しいお店ですね」
「あぁ、オレもそう思う」

そう言う虎滋郎は、実は緊張のあまり、
メインディッシュを味わうことすらできていなかった。
気づけば味もしないまま、皿の上の肉が消え失せていたぐらいだった。

食事を終え会計を済ませ店の外に出ようとした瞬間、
待っていた玉緒は虎滋郎の腕に腕をからめた。
虎滋郎の顔が、『ボッ』と言う音を立てて真っ赤になる。

いい加減夫婦になってから長いというのに、何たるざまだ……
虎滋郎は自らのチキンさ加減にとことんあきれ果てていた。

そんな夫の心理状態を知ってか知らずか、
玉緒は至極楽しそうに歩いている。

あるいはそれも仕方のないことと言えるのだろう。
ふいに一人で至高の柔道を求め修行の旅に出てしまった夫と、
こうして今、やっと心置きなくくっついていられるのだから。

コンコルド広場の夜景が二人を出迎える。

chapitre 3

「ところで今夜の宿はどうなってる?」
普通に、さもあたりまえのように虎滋郎が問いかけた。
玉緒の足が止まる。

「私たち、夫婦……ですよね」
そう言って玉緒はふくれて見せた。

本人は気づいてないかも知れないが、
それは虎滋郎に会いに来る柔が最近見せるものとよく似ていた。
こういったものは母親から娘へと代々受け継がれるものかも知れない。
虎滋郎はそんなことをふと思った。

しかし今は機嫌を損ねた女性をなんとかフォローすべき時だ。
5km程の深さの墓穴を、虎滋郎はたった今、掘ってしまったのだから。

「いや、それは……」

「ふふっ、大丈夫ですよ。ホテルの方には柔から電話を入れてもらってます。
 元々ダブルの部屋だったので、そういう事情ならOKです、って。
 そうそう、あのコ、フランス語も話せるんですね、たどたどしいけど。
 もう、一人前でしたね、しっかり。あれなら松田さんと暮らすことだって全然」

「げほっげほっ」

「あらあら、やっぱりこの話題は苦手なんですね。
 この話は今日はもうしませんから。えぇ。
 だって今夜はあなたと私の何年かぶりかのデートで、
 それに………『二人だけの夜』ですし」
 
「…………」
玉緒の発言を、虎滋郎はサラッと流したようにも見えるが、
決してそうではなかった。

それが証拠に虎滋郎は今、右手と右足を同時に出して歩いている。
まるでロボット……いや、あの日の花園薫と全く同じように。

そんな夫の姿に玉緒は笑いをこらえていた。

chapitre 4

部屋に戻り、二人きりになる。
ベッドに腰掛けた玉緒が大きくため息をついた。

「疲れたか?」
「ほっとした……というのが近いかも知れませんね。
 旅行自体はもう慣れてますから」

……さすがに色々な意味で、虎滋郎には話しの接ぎ穂が見つからない。

「あ、お茶があるんでしたね」
急に立ち上がった玉緒は、柔が持ち込んだお茶の葉と急須を見つける。

「今、いれます」

部屋の中に煎茶の香りが広がる。

ズズッ、ズズッ

虎滋郎はしばらく無言のままだったが、半分ほど飲んだ所でおもむろに口を開く。

「うまい」
「よかった」

おまえがいれてくれたお茶は最高にうまい……などというセリフは、
間違っても口に出来ない虎滋郎だったが、
玉緒は夫の言葉からその思いを十分に受け取っていたため、
コミュニケーション的になんの問題も発生していない。

先に玉緒がシャワーを浴びる。出てきた彼女はプリント柄のパジャマを着ていた。
それをちらっと見た虎滋郎は素早く立ち上がり妻とすれ違い浴室に向かう。

そしてドアの前で後ろ向きのまま声を掛ける。
「時間はかからないと思うが、眠たくなったら先に寝てていいぞ」

「はい」

シャワールームの虎滋郎の脳裏には、先ほどの妻のパジャマ姿が焼きついていた。
プリント柄は猫の肉球。その姿を見た瞬間、虎滋郎の体中の血は激しく沸騰した。

か、かわいい……

そのため、その姿が視野に入らない場所から、背中越しに声をかけるのが精一杯だった。

シャワーを終え、虎滋郎は覚悟を持ってドアを開けたが、部屋はかなり薄暗くなっていた。

やはり疲れていたのか……もう、眠ったようだな……
そう小さくつぶやくと、タオルを外し裸のままベッドに潜り込む。

いつもは一人暮らしの気楽さで裸のまま寝ていたのだが、
今夜は寝間着を着て眠るつもりになっていた。
しかし疲れている玉緒が目を覚ますこともないだろうと思い、
普段どおりにベッドに裸で潜り込む。

大きなベッドゆえ、虎滋郎の巨躯であっても隣に眠る妻との距離をとることが出来た。
目を閉じた虎滋郎はすぐ隣にある温かさを感じながらうとうとし始める。

chapitre 5

バッ!

なにかが動いた。そして虎滋郎の体の上に重みが……
考えるまでも無くそれは玉緒だった。

目を開く虎滋郎の目の前に玉緒の顔があった。
数秒間、二人は見つめあった。
玉緒の顔がゆっくりと降りてくる。そして唇が重なった。

反射的に玉緒の背中へと虎滋郎は手を回す。
そしてその手のひらは妻の素肌の感触を伝えてきた。

は、裸?!

驚く虎滋郎を玉緒がぎゅっと抱きしめる。
虎滋郎の胸には妻の乳房が柔らかい弾力とともに押し当てられ、
それとともに耳元で小さな声がした。

「こんなことする……つもり……なかったんですけど……でも」
恥ずかしそうな妻の声に、虎滋郎の下半身が勝手に答えを返す。

びくっ、と玉緒の体が震えた。太ももに当たる固いものに気付いて。

玉緒は上掛けをはねのけた。そして虎滋郎の下半身をまたぐように膝立ちになる。
薄暗い照明の下とはいえ、目の前にある豊かな乳房は、遥か昔見たときの記憶と、
ほとんどその形を変えてはいなかった。

虎滋郎の下半身はなおも固さを増し、既に玉緒の太ももを激しく叩くまでになっている。

玉緒の手が虎滋郎の両手首を押さえた。
ギョッとした虎滋郎は反射的にそれを払いのけようとした……

が、それは不可能だった。
なにかとてつもなく強い力で抑え込まれているかのように、
全日本柔道選手権覇者の猪熊虎滋郎の腕は、その拘束から逃れることすら出来ずにいた。

な、なぜだ?!

狼狽する虎滋郎。
しかし彼は猪熊家の男が持つ宿命について全く無知であった。
そう、この家の男たちは、女性、特に愛する女性に対し全く無力となってしまうのだ。

全日本選手権五連覇の滋悟郎も、妻カネコにだけは生涯勝てなかった。
そして虎滋郎が修行の旅に出たきっかけのあの事件も、実はこれが原因だった。
山下に惜敗したとはいえ、虎滋郎がそれに気付いてさえいれば、あるいは……

そんな自らの宿命を知らない虎滋郎は、身動きできぬことにとまどったまま、
新たに下半身からもたらされた感覚に気付く。
これは?

見れば玉緒の腰がゆっくりと降りていて、自らの剛直に向かっている。
先端に柔らかい感触がしたと思うと、ぬちゃっ、と言う音が部屋に響いた。

「はぁっ…ふぅっ…」
玉緒のなまめかしい声が同時に響く。

chapitre 6

ずるっ、ずるっ、

虎滋郎のものが目の前で徐々に妻の股間の奥へと飲み込まれていく。

とてつもなく柔らかいもので包まれ、もたらされた快感の波に虎滋郎はもう抗えない。
それは玉緒とて同様だった。迎え入れたものの存在感は彼女にとっても強烈だった。

「はぁ、はぁ、うっ……あっ」

ついに玉緒の腰が降りきり、その体内に虎滋郎のものが全ておさまる。
すぐにその腰がゆるやかに上下に動き始めた。

虎滋郎の手の拘束がなくなった。動きの邪魔になるのか玉緒がいましめを解いていた。

自由となった虎滋郎の手は、まっすぐ妻の両の乳房に向かう。
玉緒の手は太くたくましい虎滋郎の手をつかみ、自ら乳房にあてがう。

妖しくうごめく玉緒の粘膜に激しい快感を与えられて、
虎滋郎はすぐに限界を迎えてしまう。

ぐっ、と一瞬、玉緒の体内で極限まで膨らんだそれは、次の瞬間射精を始めた。

その変化を感じた玉緒が大きな声をあげる。

「あ、あなた!」

つられるように虎滋郎も声を出す。

「玉緒!」

幾度か繰り返される噴出。それにあわせるように玉緒の中が収縮する。
彼女は首をのけぞらし、絶叫にも似た悲鳴を断続的にあげる。
自らの体の奥に向かって打ち出されるものを、体で感じながら……

やがて、射精が終わりを告げたとき、
力尽きた玉緒はぐったりとその身を夫に預ける。

そんな妻を抱きしめれば、やはりずいぶんと華奢な体であることが感じられ、
虎滋郎はあらためて妻が女であることを思い出す。

そして先ほどかいま見せた痴態すら愛しく思え、
こんな可愛い妻を長い間放置してきた自らの過去を悔やむ。

「いいんですよ、今、こうしていられるのですから」
夫の心を見透かしたように玉緒がささやいた。

虎滋郎の腕の中、そのたくましい胸に顔を埋め、
とてもいい位置を見つけたのだろうか、
ささやかな微笑を浮かべたまま、玉緒はすぐに寝息を立て始める。

腕の中にあるあたたかさが心まで温めてくれているのを感じながら、
虎滋郎もまた眠りにつく。

玉緒の小さな寝息と虎滋郎の特大のイビキは、
おだやかな二人の想いと混じりあいながら、部屋の隅々まで、満たしてゆく……

chapitre 7

ホテルの1Fが朝食の場所だった。
向かい合って座る二人。
ゆうべのことは、当然だがどちらも口にしない。

「あなた、今日は?」
「休みだ。外に出かけよう」

なんのことはない。さきほど電話して、妻が日本から来たと告げると、
代表監督は一も二もなく休むように言ってきたのだった。
少なくともそんなシチュエーションで仕事に出たりしたら、
離婚の危機を迎える可能性がある、というのがこちらの夫婦関係の基本なので、
練習のある日にもかかわらず、休暇を得ることができたのだった。

「うれしい。
 だって、あと三日なんですよね。こっちにいられるのも。
 あさっての午後の飛行機で帰らなきゃいけないから」

ズズズッ、とコンソメスープをすすっていた虎滋郎が続きをさえぎった。

「帰らんでも…いい」
「……え?」
「帰らなくていいんだ」
「………?」

玉緒が夫の顔を正面から見ている。
圧力に耐え切れず、音を立ててコンソメスープがすすられる。

「じゃあ、わたし、ここに」
「ああ」

玉緒が身を乗り出す。
きょとんとした虎滋郎の頬に妻のキスが与えられる。
チュッ、という音がダイニングに響き、その光景に周囲の人は暖かい微笑を浮かべる。

勢いでやってしまったことに、今更ながら玉緒は顔を真っ赤にしている。
当然の如く虎滋郎はさらに赤く、体がガリゴリと音を立てそうなくらい固まったままだった。

気恥ずかしさを振り払うこともかなわず、二人は無言で朝食をとっている。

おだやかな日、ふりそそぐ陽射し。パリは晴れていた。

chapitre 8

「もしもし、柔?」
「あ、お母さん。今どこ?」
「え? ここ? ……ソルボンヌ大学のそば……だって」
「あれ、おとうさんと一緒? 今日は練習休みなの?
 へぇ~ じゃあ……デート中?」
「親をからかうんもんじゃありません」

「ねぇ柔、お義父さんはどう、元気?」
「ものすごく元気。
 今日だって、『わしもパリでエスカルゴが食いたい!』ってうるさくて」

「……じゃあ、大丈夫かな」
「なにが?」
「あの……お母さん、しばらくこっちにいることになったから」
「えっ? そうなの?」
「お義父さんの相手するの大変だろうけど、お願いしたいの」
「大丈夫。そうなるかも…って思ってたし。
 じゃ、帰りの飛行機こっちでキャンセルしておくね」
「お願い」


「そういえば、あのパジャマは少しは役に立った?」
「え?」
「あたしが旅行用に買ってあげたお母さんのパジャマ。
 おとうさん猫大好きなんだよね、とくに肉球のぷにぷにが」
「そ、そうなの?」
「おとうさん、何か言ってた?」

確かに、風呂上りの自分を見て、一瞬夫が顔を赤らめたのは確かだ。
でも、すぐにパジャマ脱いでベッドに入っちゃったわけで、その真偽については…
……いや、そんなこと、間違っても年頃の娘に母親からは言えない。
というか、昨夜のことは思い出すだけでも恥ずかしい。

「ばかなこと言うんじゃありません!」

chapitre 9

「そうそう、お正月には二人で日本に帰るから、そしたら家族みんなでね」
「わかった。楽しみに待ってる。じゃあ……
 お・し・あ・わ・せ・に!!」

玉緒が言い返そうとする前に、タイミングよく柔が電話を切った。

「もう、あのコったら」
「どうだった?」
「大丈夫ですって。おじいちゃんのことはまかせといて、って言ってくれました」
「それなら安心だ」

夫の腕に自らの腕をからめ、玉緒は聞いた。
「これからどこに行くんですか?」
相変わらず虎滋郎の挙動はおかしいが、昨日ほどではなかった。

「チョコバナナクレープのうまい店がある。そこに行こう」
「はい!」

仲良く歩き出す二人。
十数年の空白など、最初から無かったかのように……

Fin

秘技 白鳥の湖

ひいい!! た……助けてーー!!

「富士子さん、やっつけちゃえ!!」
「私達の仕返ししてねーー!!」

うぁっ! ダメ。これじゃ一分も…もたない。
気持ちよすぎて……
中で動く指が的確にGスポットを捉えてて、
さっきから我慢もできなくて潮を吹きまくってる私。

この黒川って言う選手、相当の経験のあるテクニシャンみたい。
彼の手にかかったら私みたいに1ヶ月の経験しかない女じゃ相手は無理。

猪熊さん。あなたってほんとにすごい。
『ベッドの女王ベルッケンス』を寄せ付けず、
女を知り尽くした、あの『タチの女王』のテレシコワさんの、
アナ●攻めをものともせず、勝って。

でも、私はもう……

そのとき、私の耳に花園くんの野太い声が聞こえた。

「アン・ドゥ・トロワを忘れたのかーー!!」

あ!!
そ、そうよ。何やってるの、富士子!! アン・ドゥ・トロワよ!!
花園くんと、あんなに特訓したじゃない!!


アン!!

目の前の選手の下半身を剥き出しにする。
激しく立ってるカチカチのを片手でつかんで、一気に唇をかぶせた。
思いっきり吸引し、もう片方の手でタマタマをそっとつかむ。
一瞬相手はビクッっと体を震わせた。

ドゥ!!

舌を亀頭の周囲でぐるぐる回すと、ググーッって大きくなった。
ふわふわとタマタマを優しくもんで、もう一方の手で上下動を始める。
「うわっ、うわっ!」
驚愕の声が聞こえてる。気持ちイイんだ。

トロワ!!

唇を激しく上下に動かす。そして舌は尿道を細かく左右に刺激して動く。
「あっ、あっ、あっーーー!!!」
断末魔のような叫びを上げて、目の前の太ももがガチンと固まった。

同時に私の口の中に温かいものが勢い良く飛び込んできた。
少しなまぐさい、そう、あれが。

ぴゅっ ぴゅっ ぴゅっ 

何日分溜まってたのだろう、ものすごい量。
もう、口の中がぬるぬるしたそれで一杯で。

射精が終わったところで、私は審判を見た。

「い、一本!!!!」

振り返って、みんなを見た。
口を開けて、中に溜まってる白い粘液を、誇らしく見せる。
南田さんが大声をあげた。

「やったーっ!! 秘技、白濁の湖ーーーーー!!」

通りすがりの柔道家と富士子

はっ! とぅ!
……ゼェゼェ

わからない……ハァ、ハァ……
どうすれば猪熊さんみたいにできるの?

なんか私が手でやってると痛いらしい。
花園くんは優しいから絶対そんなこと口にしないけど。

だって、こうやってバナナで特訓しても、
なんかブチギレちゃってるし……無駄な力が入りすぎてるみたいで。

ボリボリ。

「? どなた?」
「猪熊滋悟郎に教えてもらったのか?」

「え? えぇ」
最初はそうだったけど、今は花園くんと毎日……ポッ…

「でも全然うまくならないんです、二ヶ月も経つのに」

「初めて二ヶ月……たいしたものだ」
「……あとは、左手のこすり方を覚えれば完璧だ」

「さぁ」
「はい」

「右手が技を決めているように見えるだろうが、
 大事なのは左手なんだ。そう、親指は上。あとの3本は下側だ。
 最初はゆっくり柔らかく。うまいぞ、それでいい」

「強さは男の反応を見ればいい。少しずつ強く。
 ……おっ……おっ……うぁ……くぁ!」


「富士子さん!! ……あきれた、まだやってる」
声の主は柔さんだった。

「あれ? すごい!! こすり手がよくなってる」
「あの… 教えてもらったのよ」
「教えてもらった? おじいちゃんに?」
「ううん、見たことのないおじさんに。通りすがりの性道家って言ってた」

柔さんが突然私のほうを見て顔をこわばらせた。
頬に指が伸びる。なにかをすくいとるように……

「人の種」

さっきの顔面シャワーが残ってたんだ……
柔さんは指についたものを迷わず口に含んだ。

「この人の種は…………」

「この人の種はおとうさん……」

「えっ?! 人の種がおとうさんなの?」

柔さんは私の問い掛けに答えることなく、外に走り出て行った。

『ばかやろー』 vs 『イチ・ニ・サン』

「うぁ~っ、久しぶり~、キョンキョン」
「お久しぶりです南田さん」
「元気してた?」
「はぃ、まぁ……」

「へんだねぇ、どうしたの?
 みんなで柔道やってから、キョンキョンは見違えるほど、
 すごいアグレッシブになったのに、
 なんか今日は昔の『日陰今日子』さんみたい」

「あ、あの」
「ん?」
「ちょ、ちょっと……困ったことがあって……」

その言葉のあと、無言の時間が経過する。
幾度も口を開こうとしてはうつむいてしまう日陰を、
南田はコーヒーを飲みながらあたたかい目で見守っている。

社会人となった南田は、以前のような短気ではなくなっていた。
友人の悩みをじっくり聞けるほどには。
とはいえ、14人目の彼氏と既に半年以上続いている、
という事実があっての上だったわけだが。

「キョンキョン?」
「は、はい」
「すごぉ~く相談しにくいことなのね?」
「え、えぇ」
「で、あたしを相談相手に選んだということは…男がらみ…だよね」
「そうです」

「たしか卒業の時、彼ができたって……」
「はい、その時の彼と、こんど結婚するんです」
「うわぁ、おめでとう~ すごいね」
「ありがとうございます」

「で?」
「?」
「だから悩み事は?」

「その…… 彼が……」
「彼が?」
「えっと、えっと、……は、早いんです」
「早いって…… もしかして」
「そ、そう、あ、あれが」
「ん…そうか。 ってどのぐらい早いの?」

一応確認すべきだと思った南田はあえて聞いてみる。
たぶんキョンキョンにとっては一人目の男なわけで、
ここはオネェさんが経験を活かしてアドバイスをしてやろうと、
そう考えたのも当然のなりゆきだった。

「えっと、昔柔道で送り足払いやってた時の、
 あの『イチ・ニ・サン』の『サ』のところなんです。
 い、入れてからその、う、動き始めて」
最後のところだけとても小さな声で今日子は話した。

「って、その話、繰り返しなしの一回目に、って……こと?」
「え、えぇ。そうなんです。だから始まって5秒しか」

「うぁっはっはっは!!」

南田のけたたましい笑い声に今日子はうつむく。その両耳は真っ赤だ。

「ご、ごめん。キョンキョン。笑い事じゃないよね。
 あんたにとっちゃ大変なことで。ほんとにごめん。このとおり」

南田はテーブルに頭をつけて謝る。
周囲の注目を浴び、今日子はかえって恥ずかしいと思った。
体育会系の彼女の気持ちは十分にわかってはいたが。

「だから……これから先、このままでいいのかどうか……
 なんか、お友達に聞いてるのと全然違うから、
 わたし全然わからなくて、それで」

「じゃぁ、なんでそうなってるかわかる?」
「いえ、ぜんぜん」
「まずね、彼ね、キョンキョンのことが大好きなの」
「?」
「だからさ、すげぇ可愛いし綺麗だしセクシーだし、って、
 そう思ってるわけさ」
「でも私は背は小さくて、胸も全然なくて、女の魅力なんて」
「あぁ、たとえば、そうだね、そう、マリリン、覚えてるよね。
 一緒に柔道やってた、あのコ。
 そりゃ彼女と比べたら勝ち目ないよ、たしかに世間的には」

「じゃあ」
「まぁ聞きなよ」

「世間的に、って言ったろ?
 でもそんなの関係ないんだよね、男と女が二人だけでいる時って。
 で、そのときのキョンキョンは、
 『ウルトラセクシーダイナマイトボディの、この世に二人といない女』
 なの。彼にとって」
「そんな…… そんなこと……」
「いやいや、ほんとにそうなんだって」

「だからさ、彼からしてみたらあなたの中に入れちゃってる時点で、
 もう、天国に昇る気分なわけ。
 だから耐えきれなくて、あっというまに爆発。ってのもしょうがないの」
「そうなんですか?」

「だから、星三つを毎回彼がくれてると思えばいいし、
 その状態ももう少し彼が慣れてくれば改善されるだろうし、
 そうならなくても、ちょっとあなた的には欲求不満になるかもだけど、
 彼がすご~~く喜んでるってわかってたら、少しは楽になるんじゃない?」

「えぇ、もしそうなら……私、気にしません。うれしいし」
今日子の笑顔を見て、南田も同様に笑みを浮かべた。

「ありがとうございました」
今日子はそう言うと、そそくさと帰り支度を始める。

「どうしたの? 久しぶりなんだから、もっといろんな話しようよ~」
「でも、あの、約束があって」
「彼?」
「え、えぇ。ごめんなさい。
 でも、南田さんとお話してよかった。
 もう心配しなくてもよくなりましたから」
 
「それならいいんだけど」

「本当によかった。
 わたしてっきり、アナルバイブのせいだとばっかり思ってて」

「え? ちょっ」

南田の声は届くことなく、日陰今日子は涼やかな笑顔で、
街へと飛び出して行く。

きょとんとしたままの女を一人残して……

        fin

初出:2010/02/15  懐かしYAWARAのエロパロ 8
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1266017908/