YAWARA !

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最高のプレゼント(1)


「松田さん、記者やめないでください!!」
「やめるわけないだろ!!」
「あたし、柔道やりますから!!」
バスの窓から、あたし思わず叫んでた。

そのとき、乗ってるバスがスピードを上げた。
松田さん、バスを追いかけるように走ってる。
転びそうになりながら。ずっと。雪の中を。
なんか、大きな口をあけて叫んでるけど、聞こえない。
松田さん‥‥

「ちょっと!! 寒いんだけど」
「あ!! すみません」
あわてて窓を閉めた。
窓越しに見たら、松田さんの姿が見えなくなっていた。

「運転手さん、止めてください!」
気がついたら、運転席のそばに、あたし立ってた。
「停留所じゃないからだめだよ、そんな事言ったって」
「お願いですから、止めてください」
渋々と止まったバスを急いで降りて、走った。
あきらめて帰っちゃったかもしれない、って思いながら、
街灯のある交差点まで来た。

角を曲がったところに‥‥いた、松田さんだ。
両手を膝につけて、下を向いてる。
ハァハァと苦しそうな息。

「松田さん!」
あたしの言葉に、驚いた顔で見あげる。
「柔‥さん‥」

松田さんの顔を見たとたん、
いろんな思いがいっぺんにあふれてきて、言葉にならない。
急に視界がぼやける。
涙があふれてる。‥‥なんでだろ‥‥
それに、この気持ちって?
切なくて、苦しくて‥‥

街の音が、すべて消えうせて。
今、聞こえるのは、ふたりの息遣いだけ。

「柔さん‥フゥ、フゥ、」
「なんですか?」
気づかれないように涙をぬぐった。
「うそじゃ、ハァハァ‥ ないよな!? ‥‥さっきのことば」
「柔道‥のことですか?」
「そうだ!」
「はい、あたし柔道やめません!」
「そ、そうか‥‥よかった‥‥」

「松田さん、おでこ‥」
「え?」
「血が‥‥」
ハンカチで押さえてあげた。
けど、なんか出血が止まらないみたい。
「そっか。さっき盛大に転んじまったからな」
傷の手当て、しなくちゃ。

「ここから松田さんのアパート近いですよね?」
「あぁ、けっこう」
あたしタクシーを止めた。
驚いてる松田さんを無理やり乗せて、走り出した。

「いいよ、これぐらいのケガ、たいしたことないから。
 それより女の子がこんな時間に外にいちゃ‥‥ 
 運転手さん! 世田谷に、」
「いえだめです、家は遠いから。早く手当てしないと。
 それにあたしのせいで怪我したんだから」
「そんなことないよ、柔さん。俺が不注意だったからだよ」
「でも」
「だから‥!」

「すみませんが、早く決めてもらえませんか?
 雪が強くなってるんで、早く帰りたいんだけど!!」

「はぃ‥」
「ハィ‥」

「柔さんが強情だから怒られたんだぞ」
「違います! 松田さんが‥」
「シーィッ」

とりあえずアパートに向かった。
あたしの頑固さに負けたみたい。

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